聖書

旧約聖書のネフィリム:神話と謎に包まれた存在

旧約聖書は、人類の歴史や神との関係について多くの物語を伝えています。その中でも、ネフィリムと呼ばれる存在は神話的で謎めいた存在として注目を集めています。この記事では、ネフィリムについての旧約聖書の記述と、彼らがいかにして人間の世界に登場したのかについて探求していきます。

ネフィリムの起源と旧約聖書での言及

旧約聖書の創世記において、ネフィリムは「神の子供たち」とされています。これらの神の子供たちは、地上に降り立ち、人間の女性たちと交わりました。この交わりにより、彼らは地上の巨人として知られる存在であるネフィリムをもうけました。しかしながら、旧約聖書にはネフィリムに関する詳細な説明はほとんどありません。

旧約聖書 創世記6章

人が地のおもてに増え始めて、娘たちが彼らに生れると
真の神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。


神は言われた、「私がいつまでも人をおおめに見ることはない。しかし、彼の年はあと百二十年であろう」。

そのころ、またその後にも、地にネフィリムがいた。これは神の子たちが人の娘たちのところにはいって、娘たちに産ませたものである。

彼らは昔の勇士であり、有名な人々であった。


神は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。


神は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、
「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。

ネフィリムの存在についての解釈

ネフィリムについての記述が限られているため、その存在については諸説あります。一部の学者は、ネフィリムを神と人間の間の混血と解釈しています。彼らは、神聖な存在である神と、有限の存在である人間との間に生まれた存在であると考えられています。

一方で、他の学者は、ネフィリムを単なる伝説や神話的な存在と見なしています。彼らは、創世記における言及が伝説的な要素を持つものであり、歴史的事実ではないと主張しています。

ネフィリムの役割と意味

ネフィリムが登場する創世記の物語では、彼らの存在は人間の世界に大きな影響を与えました。彼らの存在は、神と人間の関係において問題を引き起こし、神の怒りを招きました。ネフィリムは、地上における人間の悪行を象徴する存在ともされています。

ネフィリムは巨人なのか?

ネフィリム、倒すものたち

ネフィリムを表す部分を、旧約聖書のギリシャ語訳ではギガンテスと訳しています。この言葉が英語のジャイアンツの語源となっていることから、ネフィリム、イコール、巨人であるという見方がされています。

ネフィリムが巨人であるとするいくつかの証拠をご紹介します。

  1. 創世記の記述: 旧約聖書の創世記6章4節には、ネフィリムが「地上にいた時にも、またその後にも、巨人たちがいた」と記されています。この文脈からは、ネフィリムと巨人の間に関連性があることが示唆されています。
  2. 「アナクの子孫」との関連: 旧約聖書の民数記13章33節では、モーセがカナン地方の偵察に派遣された一団が、そこで「アナクの子孫」と呼ばれる巨人たちを目撃したと報告しています。このアナクの子孫とは、ネフィリムと関連している可能性が指摘されています。
  3. ネフィリムの語源: 「ネフィリム」という語は、ヘブライ語の「nephilim」に由来しています。この言葉は「倒れる者」「転ぶ者」という意味を持ち、一部の学者は巨人たちの特徴を表現していると解釈しています。
  4. 文化的・神話的なパラレル: ネフィリムという巨人の存在は、旧約聖書以外の文化や神話にも見られます。たとえば、メソポタミア神話における「ギルガメシュ叙事詩」や、ギリシャ神話の「ティタン」といった神話的な巨人の存在と関連付けられることがあります。

しかしながら、ネフィリムが巨人であるとする証拠は明確ではありません。旧約聖書の記述が限られているため、ネフィリムに関する詳細な情報や身体的な特徴については明示されていません。そのため、ネフィリムが巨人であるとする考えは、解釈の一つであり、他の解釈や議論も存在します。

巨人と思われる記述

ネフィリムではないか?と思われる聖書中の登場人物をいくつかあげてみます。

バシャンの王オグ この王の棺台は長さ9キュビト(4㍍),幅4キュビト(1.8㍍)だったと書かれています。

ゴリアテ ダビデ王が少年時代に倒したゴリアテは身長が6キュビト(3メートル弱)と書かれています。

イシュビ・ベノブ ダビデの命を狙ったこの人は重さ約3キロの槍を持っていました。

ゴリアテの兄弟ラフミ 使う槍の柄が機織り期の舞希望のように太いと書かれています。

また、手足の指が6本づつある巨人がいたと書かれていて、レファイム人の子孫であると書かれています。

ダビデがフィリスティア人と戦った時,ダビデとその僕たちは「ガトでレファイムに生まれた」4人の男たちを討ち倒しました。その一人は「手の指と足の指が六本ずつ,二十四本ある,異常な大きさの男」だったと描写されています。

しかし、ダビデの時代にネフィリムが存在していたなら洪水の際に全て地上から一掃されたとされる堕天使と人のハイブリッド(ネフィリム)が存在したことになってしまい、矛盾が生じます。ですからこれがネフィリムではなく、異様に体の大きな人7日もしれません。

聖書の外典 エノク書の記述

外典であるエノク書は、アラム語の断片が『死海文書』の中でみいだされています。

死海文書が発見されて、聖書の信憑性が上がったという一面は事実ですが、その際に発見されたエノク書は正典には含まれませんでした

エノクについて

旧約聖書中に出てくるエノクは二人、アダムとえばががカインとアベルを生み出した後の子供がエノクと言います。

そしてもう一人、アダムから7代目の人、エノクです。このエノクはとても不思議で『死を見ないように移された』人と書かれています。

しかし、本当にこのエノクが筆者なのかどうかの確証は得ることができません。

そのエノク書の記述を以下にまとめます。

見目麗しい娘たちをみて欲情した覚醒者たちが、自分たちのために人間の娘たちの中から妻を選びます。

彼らの支配者セミアザスは、このことで私一人が大きな罪を負うものとなるのは恐ろしいと訴えます。そこで、ことが成就するまでお互いに呪いをかけて誓い合うことにします。

その数は二百人 そして、大洪水に至るまでに3種族もうけ、その一つが巨人たちでした。

その結果、不敬が生じ、同時に、妻や子に対してさまざまな知恵も与えます。

それは、金属(武器など)、染料、魔術(薬草類)、天体のしるしや占星術など文明の技能方法でしたが、

それによって人々は堕落していきます。

生まれた巨人たちは人の肉を食べ始め、人が少なくなり、地上には不正が満ちるようになります。

そこで人々は天に向かって助けを求めます。

神はノアを助けるために使いを使わせます。

興味深いのは、反逆側の御使いの人数、名前など詳細が記録されている点です。

また、堕天使たちのリーダーのことが述べられています。このリーダーは自分の仲間になるように巧みに引き寄せたように思えます。

もしかするとこのリーダーは失楽園での蛇?ではないかと考える学者も多く存在します。

堕天使たちが与えたもの

また、注目すべき点としては堕天使たちが、人々に与えた知恵です。それによってネフィリムたちは古代の英雄、または暴君になっていったのかもしれません。

人類史にたびたび訪れる急激な発展の裏側には、もしかすると堕天使の後押しがあるのかもしれません。今全世界を支配しているのでしょうか?

ネフィリムの存在と神話の関係

ネフィリムの存在は昔の名のある力のある人々で、恐れられる存在でした。エノク書ではその身長は1500メートルとされています。聖書中の巨人とは桁違いです。

全世界でみられる半神半人の巨人、または英雄、人々を支配し恐れられる存在。それははやがて神格化され、神話へと発展していったと考えるのは筋の通ったことのような気がします。そしてそのような神話が世界中に存在していることも注目に値します。

その他の記述

  1. ユダヤ教の伝承: ユダヤ教の中には、ネフィリムに関する伝承や解釈が存在します。たとえば、「タルムード」と呼ばれるユダヤ教の聖典において、ネフィリムは巨人であり、彼らの存在は洪水の原因とされています。
  2. ギリシャ・ローマの文献: ギリシャやローマの文献にも、ネフィリムに類似した存在が言及されています。たとえば、ギリシャ神話のティタンやローマ神話のギガントマキアといった巨人たちが登場し、神々と戦ったという伝承があります。

これらの文献や伝承は、ネフィリムについての異なる視点や詳細な情報を提供する可能性があります。しかしながら、これらの情報は宗教的な文脈や神話的な要素が含まれているため、信憑性や歴史的な正確性については注意が必要です。

御使いたちはどのように子孫を残したのか

そもそも旧約聖書の中で御使いと呼ばれる者たちが男であるのか女であるのか?という記述はありません。さらに、肉体を持たず霊的な存在であることも描かれています。

しかし、聖書の記述の中には体を持たない御使いが人にわかる(見える)肉体を持った男性としてしばしば登場します。たとえば、アブラハムの前に現れた3人のみ使いは、非常に美しい男性でした。

もう一つ聖書の記述で注目できる点としては、そもそも人類を創造したさいに、神は「我々に似た形で人を作ろう」と述べています。

堕天使が登場した原因となったのは、あくまで聖書の記述では自らの欲望をつのらせた結果として地上の女性たちと関係を持ったことでした。その一部の御使いたちは神の意図に反逆する側の立場を選ぶことのなったのでした。

ノアの洪水によって肉体を持ったものは滅ぶ

ノアの洪水以降、生き残った人類はすべてノアの家系です。ネフィリムは肉体を持っていましたからこのときに地上からは一掃された事になっています。

しかし、ネフィリムを生み出した堕天使たちの肉体は仮の姿ですから、生き続けました。エノク書中で人々に処世術を教えた天使たちは今も生きているということができるのです。